2002.1.30

朝7時起床。
昨日のシャッチョウにはホント驚いた。
こんなとこで倒れられたら、次の日の新聞に『日本人買い付け旅行客・ホーチミンで無銭飲食』っていう大見出しで掲載されるじゃない。
そんな事にでもなったら大変だ、シャッチョウを抱えながら必死でホテルに戻った。
本当に世話がやけるシャッチョウだ。

今日の朝はシャッチョウの体調の事も考えて、ホテルのビュッフェにする事にした。
あんたバカじゃないの。
シャッチョウのお皿を見ると、大盛りに色んな料理をとっている。
そんな暴飲暴食するから体がおかしくなるんだよ、腹八分目っていう言葉知らないのか。
私はオムレツ、おかゆ、果物盛り合わせ、ラーメンを食べる事にした。
いつもながら何という取り合わせだろう。
私こそ腹八分目にしなくちゃ。

このホテルの最上階のレストランからメコン川が一望できる。
空はすっきり晴れわたっているけど、町の色はグレー色。
川も日本のような色じゃなく、メコン川は砂の色。
向こう岸に渡ればもっと地元民の生活が見れるんだろうな。
そんな事を考えながら、ふと昨日の夜のワインの事を思い出した。
昨日の夜はスーパーで買ったワインを飲もうと思って、ワインオープナーでコルクを抜こうと必死で頑張っていた。
するとオープナーの肝心なコイル部分がポキッと折れてしまった。
普通に使ってたら折れるはずないのに、コイル部分を見るとアルミで出来ていた。
アルミって、ワインオープナーは普通は鉄で作るだろ。
持ってくるの忘れて、わざわざ175円も出して買ったのに。
コルク抜いてからなら折れてもいいけど、コルク抜く前に途中で折れてしまうなんて。
私はワインの事で必死になった、このまま飲まずして日本に帰れるものか。
倒れているシャッチョウをたたき起こし、どうにかしてコルクを抜いて頂だいとお願いした。
シャッチョウはベッドから這いずり出してきて、必死にコルクを抜いてくれた。
サンキュー、シャッチョウ、もうベッドに横になってもいいよ。
サイゴン川を見ながらそんな事を思い出していた。
腹八分目なんてもう言わないよ、腹十二分目ぐらい食べてもいいよ。
シャッチョウは快調なのか、ベトナムコーヒーを3杯もおかわりしている。
シャッチョウ、限度っていうものがあるだろ腹十分目ぐらいにしといた方がいいんじゃないか。

さあ、今日も元気に買い付けへと出掛けるか。
近所の雑貨屋を片っ端から見てまわる。
前回好評だった雑貨屋に寄ってみた。
少数民族の古布で作ったバッグが好評だったので、今回は大量に買うことにした。
そこにもバカンスOLは出没している。
バカンスOLと商品の争奪戦が始まった。
バカンスOLはお土産リストを広げ、商品を物色し始めた、こっちも必死だ。
あんたはお土産だろ、お土産なんかどこのでもいいじゃないか、私は仕事できているんだ、バカンスOLよりも先にいい商品を手に入れなきゃ。
バカンスOLも必死になっている、でもまだまだ甘いんだよ、あんた素人だろ、私はこの道何年のプロだよ。
バカンスOLは諦めたのかお勘定をしてもらっている。
あんたら、本当にダメだね。
どうしてディスカウントって言わないんだ、ベトナムに来て言い値で買うなんて、だからどこもディスカウントが通用しなくなるんだよ。
そんなに高くない物だから、長時間交渉してわざわざディスカウントしてもらわなくてもねぇ、面倒くさい、って思ってんだろ。
あぁー、嫌になっちゃうよ。
バカンスOLは言い値で買って、ニコニコ顔で「サンキュー」って言いながら帰って行った。
さて私の番だ、勿論「ディスカウント」、お姉ちゃんは嫌な顔しながら少し値引きしてくれた。
さぁ、ここで登場、英語バージョン名刺、その印篭を見てお姉ちゃんはさっきよりもっと値引きをしてくれた、この印籠はやっぱり役に立つんだね、名刺を作り直した甲斐があった。
財布を見るとまたお金が足りない、お姉ちゃんに全財産を差し出す。
お姉ちゃんは渋々「OK」って首を縦にふった。
この国は本当にいい国だ、前回トラブル続出だったけど、今回は凄くスムーズに事が運んでいる。
スムーズ過ぎて面白味に欠けるよ。

買い付けも終盤になってきた、ちょっと余裕が出てきたので、今回は自分の物も買ってみよう。
REXホテルに行き、REXホテルの灰皿と蓋付きボールを買う事にした。
ホテルで買うからサービス料5%、付加価値税10%が取られる。
それだけ取られても、76999ドン(692円)、安いね。
勿論お釣りは貰えないよ、仮に77000ドン渡したとしても、1ドン札はこの国にはないんだから。
半端な数字は全部繰上げさ、76999ドンってなってても、本当は77000ドンなんだ。
日本人の感覚では692円って安いけど、地元民にしてみりゃ、凄く高価な灰皿とボールなんだろうな。
フォーが50円だから、13杯食べてお釣りも貰えるよ、500mlのミネラルウォーターが21円だろ、32本も買えるよ、いい国だねベトナムって。

REXホテルの近くでかわいい靴屋があったんだ。
そこで靴を買う事にした、22ドルもする、高いよね、3014円もする靴だよ。
日本だと飛びっきり安い靴だけど、ベトナムだと飛びっきり高い靴だ。
そのベトナムで飛びっきり高い靴を私は買う事にした、自分へのご褒美さ。
ベトナム公務員の給料の3分の1の靴だ。
日本の公務員の給料って大学卒初任給で18万ぐらい貰えるんだろう、それから考えると、3分の1って言ったら、6万円だ、私は6万円もする靴を買ったんだね。
高い靴だ、ケースに入れて神棚に飾らないといけないぐらい高価な靴を買ってしまった。

そろそろお昼だ、今回行く予定はしていなかったんだけど、買い付けもめどが立ったし、シャッチョウにバインセオでも食べさすか。
ホテルに戻り、タクシーでバインセオ屋に行く事にした。
メーターがちゃんと動いているかチェック。
着いた途端にメーターが上がった、めっちゃ悔しい、タクシーのおっちゃんモタモタしてるからじゃないか、15000ドン(135円)也。
ここの揚げ春巻きは最高だったけど、バインセオはいまいちだった、でも話の種にまた食べてみる事にした。
バインセオが値上がりしている、前回は13000ドンって書いてあった上に14000ドンって書き直してあった。
今回はその上にまた書きなおしてある、15000ドン。
タクシー代と同じ値段のバインセオはやっぱりいまいち。
あれっ、おかしいぞ、急に胃が痛くなってきた、気のせいかな、揚げ春巻きを食べよう。
やっぱり美味しいね、揚げ春巻き。
うー、でも胃も痛い、どうしたんだろう、急いでビール飲んだせいだろうか。
シャッチョウは上機嫌で暴飲暴食を始めている。
私は益々胃が痛くなってきた。
昨日のシャッチョウに対する態度が悪かったんだろうか、たたき起こしてワイン開けてもらったのがいけなかったんだろうか、それともおかゆをひとり占めしたのがいけなかったんだろうか、ちょっと反省した。
これから歩いて帰るんだよ、途中の雑貨屋めぐり計画もあるっていうのに。
シャッチョウの暴飲暴食終了、しめて79000ドン(711円)也
ビール2本、バインセオ、揚げ春巻き、ハスの茎のサラダ、やっぱり安いね。
めちゃくちゃ胃が痛くなってきた、腰も痛くなってきた、手で腰を支えないと歩けないぐらい両方痛くなってきた。
ベッドのスプリングが柔らか過ぎて、昨日から腰が痛かったのがひどくなってきた。
でもここで倒れるわけにはいかない、明日の新聞に『日本人買い付け観光客・スプリングにやられる』って大見出しで掲載される事になったらたまんない、私は鉄の女なんだ、倒れるはずないじゃないか。
お目当ての雑貨屋まで凄く遠く感じる、途中で旧アメリカ大使館の前を通る。
旧なのに今だかつて凄い建物だ、中を覗くと、ベトナム人らしき人がいっぱいいる。
ビザの発給待ちだろうか。
大使館の警備のお兄ちゃんが「How are you」と話し掛けてきた。
私は引きつりながら「Fain thankyou」とだけ言った、いつもならもっと話しするんだけど、もう私は限界なんだ。
あの長いベトナム人の行列は何とか、いろいろ聞きたかったんだけど、そんな余裕はない。
目の前にお目当ての雑貨屋が見えてきた、あーでももう駄目かもしれない。
お店の中に入る、全ての商品が40%OFFの表示になっていた、凄くお得だ、でももうそれどころじゃない。
お店の前にホテルがあった、そこまで行ってトイレを拝借しよう。
このホテルは超高級だ、5つ星ホテルだから、私が泊まっているホテルとは格が違う。
死にそうな顔をしてロビーをうろついていたら、ドアマンが心配そうに私に手を差し伸べた。
「トイレはどこですか?」と私、ドアマンは「あっちです」と指を指して教えてくれた。
私は一目散にトイレに直行した。
こんなに綺麗なトイレは初めてだ。
大きな壁画があり、手を拭く為のハンドタオルが綺麗な箱に入っている。
このハンドタオル一枚ぐらいもらって帰ってもいいのかな、 トイレ探検隊の気分でそんな事を考えていたら、体はすっかり治っていた。
なんて単純な体なんだ。
でも近くにホテルがあってよかったよ、一時はどうなるかと思った。
さあ、さっきの雑貨屋に戻ろう。
雑貨屋に戻ってきた、あーまただ、もう死ぬかもしれない。
もう一度ホテルに戻ろう。
ドアマンはもうドアを開けてはくれない、「トイレ借りに来ただけだろ、ホテルの客じゃないんだから、ドアは開けてやるもんか、自分で開けな」って思ってるんだろうな。
私はまた死にそうな顔をしてトイレに直行した。
さっきのハンドタオルが気になる。
私が使った使用済みのハンドタオルは綺麗さっぱり片付いている、タオルの補充もされている。
なんて早業なんだ、10分ぐらいしかたっていないのに、サービス満点、 やっぱり5つ星は違うよね。
もう一軒雑貨屋に行く事になっているんだけど、もう体力の限界だ。
ハードスケジュールだったから、疲れが出たんだろう、今日はもうホテルに帰ろう。

今回かなりの量の買い付けでスーツケースにも、持ってきたボストンバッグにも商品は入りきらない。
ホテルに帰る途中で段ボールを調達しに行く事にした。
フラフラになりながら、段ボール屋がある通りまで来た。
ここは新品の段ボール屋じゃない、中古の段ボール屋だ。
そこのパナソニックって書いてある段ボールはいくらっておっちゃんに尋ねた。
おっちゃんは12000ドンって言った。
12000ドンってか、何で中古の段ボールが12000ドン(108円)もするんだよ、足元見やがって。
日本でも新品でそれぐらいなのに、ベトナムでそれも中古で12000ドンもするはずないじゃないか。
ネットで事前調査済みなんだ、5000ドンぐらいのはずだ、日本買い付け行商人をなめるんじゃないよ。
体の事はすっかり忘れてエキサイトしてきた。
シャッチョウがベトナムに来て初めて切れた。
やったぞ、シャッチョウ、それこそ商売人だ、電卓片手に日本語で「日本で新品で買ってもこれぐらいや、何でベトナムで、しかも中古でこんかいもするんや」
切れてる、シャッチョウ完全に切れてる。
店の人が何事かといっぱい出てきた。
シャッチョウが提示した金額だとこれぐらいの箱になるって、おっちゃんは長細い箱を持ってきた。
そんな長細い箱持ってきて、何入れるねん、何も入らへんやないか。
「ほんだら6000ドンの箱はどれや」ってシャッチョウが怒鳴った、おっちゃん慌てて漢字ばかりの箱を持ってきた。
今度は中国の箱かよ。
さっきから見てたら、紙の厚みが段々薄くなってきている、日本のメーカーの箱は高くて、中国の箱は安い、日本の段ボールは質がいいのか、サンヨーの箱は凄く高かったぞ。
私が「もうこの箱でええよ」って中国の箱を指差しシャッチョウをたしなめた。
シャッチョウはまだ納得いかない、「お前らなめとんな」
10000ドンを渡してお釣りを受け取る、その間もシャッチョウは切れ続けている。
おっちゃんが段ボールに紐をつけてくれようとした、それを見てシャッチョウがまた文句を言っている。
おっちゃんの親切も台無しだ、私は体すっかり元気になったよ。
シャッチョウの怒りはおさまらないけど、ホテルに戻ろう。

やめときゃいいのに、シクロのおっちゃんが話し掛けてきた。
あんた運が悪かったね、シャッチョウは今切れてるんだ、そんな時に話しかけたらどうなるかわかるだろう。
シャッチョウは日本では口から生まれた男と呼ばれてるんだ。
段ボール屋のうっぷんを、今度はシクロのおっちゃんにぶちまけてる。
それも日本語で、段ボール屋での一部始終を怒りながら解説しているんだ。
シクロのおっちゃんは笑ってるよ、あんたシャッチョウは怒ってるんだよ、そんな時に笑っちゃいけないよ、シャッチョウがまた怒るじゃないか、バカだね。
シクロのおっちゃんは一目散に逃げて行った、だから言っただろ、やめときなって。
シャッチョウはホテルに戻ってきてもまだ怒っている、私はダウンしてしまった。
とりあえずベッドに横になる事にした、スプリングが柔らか過ぎで益々体おかしくなるかもわからないけど。
今日はもう仕事にならない。
私って鉄の女だとばかり思っていたのに、暴飲暴食もしないで、おとなしく消化のいい物ばかり食べてたのにさ、やっぱりハードスケジュール過ぎたのかな。
今度は直行便で来たいよ、貧乏行商人には無理な話だろうけど、シャッチョウに直談判だ。

夕方まで横になっていた、少しはマシになったが完全復活にはならない。
今日一晩ゆっくり寝たら、明日は元気になるだろうと思っていた。
もうひと頑張り、朝行った時には閉まっていた雑貨屋にもう一度行く事にした。
今度は開いているけど、お店のお姉ちゃんはご飯を食べている。
私の事は気にせずご飯食べてくれていいよ。
ベトナムに来てずっと不思議だったのが、いつでもどこでもみんなご飯を食べている。
昼時だからお昼ご飯食べてるんだなとかじゃない、いつでも食べている。
お店の定員さんは裏で食べたりしない、お店のレジの横で堂々と食べてる、お客さんがいようがおかまいなし。
ベトナム人の働いているっていう印象はまったくない、いつでも食べているっていう印象と、もっと働けよっていう印象だ。
唯一この雑貨屋だけがディスカウントが通用しなかった、オーナーは日本人なのに。
飛びっきり高いバッグを買ったのに、儲け過ぎなんじゃないか日本人オーナー。
また体の調子が悪くなってきた、値引きしてくれないからだよ。
ホテルに一旦戻り小休止。

今日の晩御飯も近くのレストランにしよう、でももう揚げた物とか、こってり系はパスしたい。
前回行った『レモングラス』に行く事にした。
ここで食べたカニチャーハンが美味しかったんだ、今回もそれを頼む事にしよう。
ちょっと店の雰囲気が変わっている、民族楽器の弾き語りのお姉ちゃんがいてる。
メニューを見ると、一番下にサービス料10%、付加価値税15%頂きますって日本語で書いてある。
前回は一銭も税金なんか取られなかったのに、半年の間に25%も取るようなお店になりやがって。
前回の旅行記には書かなかったけど、このレストランはお笑いだ。
メニューにワインフルボトルしかなかったので、ハーフボトルはありますかってウエイターに尋ねた。
するとウエイターはありますと言ったので、ハーフボトルを頼むことにした。
しばらくしてウエイターがワインのフルボトルを持ってきた。
でも中身はワイン半分ぐらいしか入ってない。
そりゃまあ、フルボトルの半分だからハーフだけどさ、ハーフボトルって言ったら普通はハーフのボトルを持ってくるだろ、どこのレストランがフルボトルの半分飲みかけのワイン持ってくるかな。
私はそこで大笑いした、ここまでやってくれりゃ腹立つよりも笑いが先に出る。
ウエイターも苦笑いしているし、私も笑いながら「OK」って言ったんだ。
前回このレストランではそんな珍事件があった。
そんな事にも懲りずにまたこのレストランに来てみた、カニチャーハンが美味しいからね。
お腹はあまり空いてないので、カニチャーハンと空芯菜のニンニク炒めだけにした。
周りの白人は立派な物を食べているのに、私はかなり粗食だ。
でも量が多いんだ、仕方ないよ。
カニチャーハンは相変わらず美味しい、このご飯のぱらつき加減が最高。
空芯菜をニンニクで炒めただけなんだけど、このシンプルさが美味しい。
25%も税金取る立派なレストランになってしまったけど、美味しいからそれでもいいだろう。
抗議するのもしないのも紙一重なんだよね、25%も取られりゃ普通は切れて大暴れしている所だけど、なぜかこのレストランだけは許せてしまう。
体調も完全復活にはなっていない、今日は早々に引き上げよう。
ゆっくり寝たら、明日の朝はすっきりするはずさ。


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