2002.1.31
朝7時起床。
昨日は夜9時に寝た、それでも体は最悪、腰は痛い、胃は痛い、今日がベトナム最終日だっていうのに。
ベッドの中で丸まっても、背筋ピンと伸ばしても腰が痛い、早く日本に帰って自分のベッドで寝たい。
胃はずっとキリキリ痛い、お腹空き過ぎて痛いんだか、体冷やして痛いんだか、どっちかわからない。
バファリン飲んだら痛いの治るかなってシャッチョウに相談してみた。
胃痛と腰痛にはバファリンは効かんやろってあっけない返事。
そっか駄目なのか、それじゃあ勿論パブロンも駄目だよね、それは風邪薬やろってつっこまれた。
だってもう死にそうなぐらい痛いんだもん、飲んで楽になるんだったら何でも飲むよ。
私の事だからひょっとしてお腹空き過ぎて胃が痛いのかもしれない、ベッドから這いずりだし死にそうな顔しながらホテルのレストランに行った。
今日は何を食べよう。
ここのラーメンは最高に美味しかった、そのラーメンが食べたいのに今日はフォーしかない、凄く残念。
オムレツ、フライドポテト、おかゆ、モンキーバナナ、今日は控え目だ、でもフライドポテトは消化悪いだろ。
シャッチョウも胃が痛いらしいが、ベトナムコーヒー3杯もおかわりしている。
シャッチョウはそんなに濃い刺激物を飲むから胃が痛いんだよ。
やっぱりお腹空き過ぎて胃が痛かったんじゃない、お腹満腹になっても胃が痛いのはおさまらない。
今日は10時にビーズのアクセサリー屋のお姉ちゃんと約束している、それまで部屋で休む事にした。
ベッドに横になってても痛い、今日日本に帰るのに、こんなに痛けりゃ飛行機に乗る事も出来ない。
このままだとベトナムに長期滞在しなくちゃならないかもしれない。
でも私のビザは後一週間で切れるんだ、不法滞在で強制送還されたらもう二度と海外になんか行けなくなる。
そんな事になったら大変だ、早々とビザの申請になんか行くからだよ、だって領事館の人に「ダイタイネ」って連発されりゃ、不安になって早く取っておかなきゃって思うよ。
領事館の人によって言う事も違うんだから。
あーとんでもない事になってきた。
薬飲んでも全然効き目がない、でももう10時だ、オーダーのアクセサリーを取りに行かなきゃ。
私はもうドアすら開けられない、歩くだけで精一杯だ。
バイクの間をすり抜けて横断歩道を渡る事ももう考えられない、バイクとの距離感がつかめないから、とりあえず足を一歩前に出す。
バイクが近づいて来ようがお構いなし、だって本当に考えられないぐらいフラフラなんだ。
ここで引ったくりにあっても私は追いかける事も出来ない、最悪の状態だ。

やっとの思いでアクセサリー屋に到着する。
お姉ちゃんは私の顔を見てキョトンとしている、一瞬お姉ちゃんの顔色が変わった。
思い出したようだねお姉ちゃん、私は必死の思いでここまで来たんだ、さあオーダーのアクセサリーを貰おうじゃないか。
お姉ちゃんは「ごめんなさい、昨日はとても忙しかったの、だからまだ出来あがってないのよ」って言い訳をする。
嘘つけ、あんた今ご飯食べてただろ、そんなご飯食べる時間があるんだったら先に仕事しろよ。
普通なら私はここで切れてる、でももう切れる体力もないんだ、お姉ちゃんラッキーだったね。
お姉ちゃんは1時間後にもう一度来てくれたら作っとくからって言った、1時間で作れるんならご飯食べる前に作れってば。
呆れかえってもう怒る気力もない、1時間もどうすりゃいいんだ、近くにもう1軒雑貨屋があった、そこに行くしかない。
雑貨屋に行っても商品見て考える気力もない、もうやめよう、カフェで時間でも潰そう。
電気街に来た、バイクの荷台に大型冷蔵庫を乗せてる、そりゃ無理だろ、どうやって運ぶんだ。
冷蔵庫に紐を通し、その冷蔵庫を背負った格好のままバイクに乗る、凄い技を見た。
サーカスの曲芸のようだ、 バイクで何でも運ぶんだね。

地元民御用達カフェに到着。
地元民ばかりで凄く繁盛している。
私は勿論ベトナムコーヒーを注文する。
本格派ベトナムコーヒーが運ばれてきた、でもこれはブラックだ、私はコンデンスミルクたっぷりのベトナムコーヒーが飲みたかったのに。
一口飲んでみた、苦い、苦すぎる、炭の抽出液のようだ、私には飲めない。
他のお客さんを見るとみんなアイスクリームを頼んでいる、私もアイスクリームにすりゃよかった、でも胃が痛いんだ。
お風呂の椅子があるだけのオープンカフェだから、物乞い、靴磨き、宝くじ売り、新聞売り、いろんな人が入れ替わり立ち代わりやってくる、騒々しいカフェだ。
みんな仕事しないでカフェでアイスクリームなんか食べてていいのか、そこの新聞読んでるおっちゃん仕事はどうした、今日は休みなのか。
このカフェは最高だ、凄くのんびりするよ。
ベトナムに来て、毎日忙しく買い付けしていて、ゆっくり人を観察する時間がなかったんだ。
やっとゆっくりベトナム人を観察する時間が持てた、これも体力フラフラになったおかげだね。
地元民の生活を垣間見るにはやっぱり地元民御用達の店に限る。
胃腸に自信がある人に限るけど。

おっと、約束の時間は過ぎている、急いで行こう。
お姉ちゃんは申し訳なさそうにしている、そりゃそうだろ、勿論ここでも「ディスカウント」
お姉ちゃんは少し値引きしてくれた、当たり前だよね、お姉ちゃんが約束破ったんだから。
さぁ、これで今回の買い付け終了。
開放感で安心したのか益々最悪な状態となってきた。
今日は6時まで部屋を使えるから、それまでホテルで休む事にしよう。
ホテルに戻ったらもう外出したくないだろうから、お昼は近くにあったロッテリアでハンバーガーセットをテイクアウトする事にした。
ドンはもう残り少ない、持って帰っても再両替できないから、使いきるしかないんだ。
でもハンバーガーセットを買うには足らなすぎる。
仕方ないここはドルで払う事にしよう。
ドルも大きいお札しか持ってなかった、お釣りは貰えた、でもドンなんだ。
ドンはもういらないんだよ。
2000円分もドン貰っても、もう買うものないんだ、4月にまた来る予定だけど、本当に来るかどうかもわからない。
叔父がフランスに転勤になったから、4月はシャッチョウにフランス行きをお願いするつもりでいるのに。
飛びっきり高い靴を買うにはお金が足りないし、もういらないよドンは。

フラフラになりながらやっとの思いで、部屋に到着する。
横になってもおさまる気配なし。
もう現地病院行きかもしれない、英語もベトナム語もわからないのに。
こんな体で大荷物抱えて帰る事が出来るんだろうか。
クーラ-で体が冷えきっているのかもしれない、お腹まわりを毛布で温めることにした。
温めると少し楽になってきた、ひょっとして体が冷えきっていて胃が痛くなっていたのかもしれない。
めちゃくちゃ楽になってきた。
これで、胃に負担大のハンバーガも食べれる。
冷えきったハンバーガーを食べたらまた胃が痛くなるかもしれない、でも今食べないと次の食事は機内食なんだから。
日本のロッテリアと同じ味がするのか、それともこのロッテリアは前回のハードロックカフェと同じなのか。
ハンバーガーを一口食べた、やっぱり嘘だ、ハンバーグが硬い、硬すぎる、いくら冷えたハンバーグでもここまで硬くはならないだろう、何の肉を使っているんだろう、ちゃんとした牛肉なのだろうか。
フライドポテトは普通の味、ハンバーガーの味はいいけど肉の硬さがどうも納得いかないな。
やっぱりロッテリアに抗議のメールだ。
ベトナムでは凄く高価な食べ物なのに、35000(315円)ドンもしたんだよ。

体調もよくなってきた事だし、ドンで買える物がないか探しに行こう。
お土産も買ってない事だし、近くでバチャン焼きを買う事にした。
でもここはドル表示だ、やっぱりドンを持って帰るしかないんだね。
お土産に水牛でできたフォークのセットと湯呑を買う事にした。

残りの時間は撮影タイムだ。
今回はデジカメを持参した、前回は引ったくりにあったら最悪だと思っていたので、普通のカメラを持参した。
もう15年も使っている、重たいカメラ。
デジカメ買ってからそのカメラは使ってなかった、久しぶりに使ったらボケボケ写真ばっかりだった。
何の為に重たいカメラ持参したのかわからない、だから今回は使いなれているデジカメにした。
でもこのデジカメもどうしようもないんだ、スマートメディアの調子が悪く、3枚撮影したうちの1枚だけがかろうじて見れるっていうシロモノなんだ。
だから同じのを3枚撮影しなくちゃならない、カメラもデジカメもどっちもどっちだよな。
シクロのおっちゃんの昼寝姿とか被写体はいっぱいあるけど、勝手に撮って見つかったら「あんた、今俺を撮ってたね」ってお金要求されるかもわからない。
シャッチョウを撮るふりして、コッソリ撮った、ちゃんと写ってくれてりゃいいけど。

そろそろ荷造りしなきゃ、もうすぐ迎えの車が来る時間だ。
昨日のうちにシャッチョウが殆ど荷造りしてくれたんだ、わざわざ段ボール買ったのに、荷物はボストンバッグとスーツケースに入ってしまった。
それを見て、またシャッチョウが怒り出した。
「なやねん、こんなんやったら買わんでよかったんやんか」
そんなに悔しいのなら、空の段ボールに紐つけてもって帰るか。
勿体無いけど仕方ないよ、持って帰って超過料金取られちゃたまんないだろ。

チェックアウトの時間がやってきた。
ロビーで待っていたら、旅行会社の人が普通車で迎えに来た。
普通車にはこの荷物は乗らないだろう、大量の荷物だよ。
スーツケース1個とボストンバッグ2個はトランクにおさまった、残りのスーツケースは助手席へ乗せる事になった。
普通の観光客はこんなにも荷物はないだろうけど、私は買い付けだからね。
旅行会社の人は空港までいろんな話をしてくれた。
ベトナムでは50ccのバイクが日本円で22万円ぐらいするらしい。
高すぎる、ベトナムでは超高級だ、年収2年分だ。
勿論車はもっと高い、日本より高いらしい。
食べ物の物価は安いけど、通信費や電化製品は日本より高いって教えてくれた。
最近では携帯電話の引ったくりも多いらしい、その人は買ったその日に引ったくられたらしい。
地元民でも引ったくりにあう町なんだ。
「今日関空からのお客様をホテルまでご案内したんですが、チェックインしてから外に出た途端、スリにあいました」って教えてくれた。
ベトナムに着いたその日にスリにあうなんて、もうその人は二度とベトナムに来たいとは思わないだろう。
日本でもスリや置き引きにあう時はあう、スキを見せるか見せないかじゃないかな。
絶対取られないぞっていうオーラをかもし出していたら盗人も寄ってこないよ。

空港に着いた。
空港はガラガラだ。
前回は満員すし詰め状態だったのに、人は凄くまばら。
時間帯にもよるんだろうな、前回はお昼の便だったけど、今回は夜の便だから。
あれっ、おかしいぞ、空港が凄く綺麗になっている、出国のチェックインカウンターが改装されている。
あの賄賂要求する税関職員もにこやかだ。
今回も女性の税関職員の列に並んだ。
人がまばらだから凄くスムーズだ、私の番がやってきた、これまたスムーズにすんだ。
後は空港税を払って、出国審査だ。
ここも簡単だ、と思いきや、私のチケットを渡し忘れている、「チケット」って言ったら、出国審査のお姉ちゃんは「ソーリー」って言いながら笑った。
笑ったよ、この人、ソーリーって自分から謝る事もあるんだね。
返してほしけりゃ、お金よこしなって言われても不思議じゃないのに。
ベトナムは変わりつつあるんだ。
猛スピードで変化していっているんだ、来るたびに物価も上がってお徳感もなくなっていくんだろうな。
何もかも無事終了、ホント拍子抜けだ。

でもまだドキドキが残っている。
バンコクでのトランジットが1時間30分しかないんだ。
前回のように2時間も遅れてしまったら、もう関空行きには乗れない。
バンコクで一夜を過ごすのか、そんな事になったら大変だ、注文の出荷やお客様へ連絡しなけりゃならない事もたくさんあるのに。

あっ、シャッチョウが捕まった。
何やってんだよ、シャッチョウ、何かへんなもんでも持ち出そうとしてたのか。
シャッチョウの機内持ち込みのボストンバッグが大きすぎるから、預けてくれって言われている。
それは駄目だよ、壊れそうな物を全部そこに入れてあるんだから。
破損してたら売り物にならないじゃないか、体倒れそうになりながらも必死で買い付けた商品だよ、命よりも大事なんだ。
この商品を楽しみにしているお客さんが日本で待ってるんだ、絶対渡すものか。
抵抗もむなしく、取り上げられた。
あー、もう最悪だ、これで破損してたら抗議のメールどころじゃ済まされないよ、損害賠償請求だ。
シャッチョウはブルーだ、もうブルーを通り越して顔はグレーになっている。
日本に着くまで荷物の事が気になって眠れないって言っている。
トランジットの事も気になるし荷物の事も気になる。
気になるって言ってたわりにシャッチョウ食欲旺盛だね。
私の分まで機内食をたいらげたよ、ワインもグイグイおかわりしている、荷物の事を本当に心配しているのか。

無事、バンコクまで着いたけど、搭乗まで1時間しかない、まだこれからチェックインもしなきゃならない、トランスファーデスクまで走った走った。
トランスファーデスクのお姉ちゃんはシャッチョウから取り上げた荷物の事を調べている。
あんたら取り上げるから調べなくちゃならないんだろ、あのサイズの鞄は機内持込OKサイズなんだよ。
私が何年鞄の販売してると思ってんだ、商品入れすぎてちょっとパンパンに膨れていただけじゃないか。
そんなちょっとの事ぐらいでガタガタ言うな。
って言いたかったが、ぐっとこらえた、だって機内預けにしたっていう事は、完全に超過しているんだ。
今回も機内預けの荷物は、25キロだったけど大目に見てくれて超過料金はなしだった。
ボストンバッグも預けた形になったから、超過の超過で大超過さ。
その事を調べているんだろう。
超過している事はわかっていたから機内に持ち込んだのに、それをあんたらが勝手に預けろって言ったんだろ、それでも超過料金請求するのか。
お姉ちゃんは何も言わずに、関空行きのチケットを手渡してくれた。
当たり前だよ、って本当はホッとした、莫大な超過料金請求されるんじゃないかとドキドキしていた。
急いでゲートまで行った、でも走る事はなかったんだ、余裕余裕。
預けた荷物の事が気になるが、なるようにしかならない、頑丈なボストンバッグだからきっと大丈夫だろう。

私は飛行機に乗った途端、爆睡した。
軽食のパウンドケーキも食べず、ワインも飲まず、朝食まで爆睡。
朝食に鯛の塩焼きが出た、でもこんな早朝に食べれるはずがない、体の調子も戻ってないんだ。
やっと日本に到着した。
寒い寒すぎる、こんなにも日本は寒かったけ、無事帰国できてホッとしたが、体の調子がまた悪くなりそうだ。
私の体は温度差20度に耐えられる体じゃないんだ。
 
あとがき

今回のベトナム訪問は2回目ということもあり、お釣り貰えないのも、レストランでトラブルのも覚悟の上でした。
しかし、今回はトラブルもなくスムーズでした。
拍子抜けという感じで、少し面白味に欠けたかもしれません。
トラブルも旅行の醍醐味なんだなって、今回わかりました。

しかしベトナム人のあのエネルギーはどこから生まれてくるのでしょう。
町も人も生きてるっていう活気が満ち溢れています。
ベトナムの不思議にとりつかれ、私は今後もエネルギーを補充しにベトナムを訪問します。

 
この旅行記はノンフィクションです。
私が実際に経験し感じた事をそのまま書いています。
この旅行記を読まれ気分を害された方がいらっしゃいましたら深くお詫び致します。

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